恋口の切りかた
俺が城中の長廊下での一件を簡単に説明すると、

「伊羽御家老に、初対面で喧嘩を売っただと!?」

神崎は唖然とした。

「馬鹿ですよねえ」と隼人。

さっきの神崎に対する無礼だ何だというツッコミは完全に棚に上げたセリフを聞いて、ヒクヒクと与力のこめかみがまた動いた。

身分はともかく、

見たところ二十七、八に思える神崎にとっては、
俺よりは年上の隼人も、年下の若輩に違いない。

「それで城勤めから外されて、この事件を押しつけられたってわけです」

押しつけられた、などという隼人の言葉は、元からこの事件を担当している神崎にとっては無礼千万とも言えるもので、

「まあ、これから共に事件を追うお仲間だ。仲良くしようぜ」

隼人に続いて俺が気安い口調でそう言って肩を叩くと、


精悍な与力の顔には、めき、と音でも立てそうな勢いで青筋が浮いた。






「円士郎様! 秋山様!」

そう声をかけながら若い同心が俺と隼人に駆け寄ってきたのは、

俺たちが白州(*)を横目に見ながら奉行所を後にしようとした時のことだった。



(*白州:時代劇などでよく裁きを下している場所)
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