恋口の切りかた
「あァ?」

いつも渡世人連中に対する時のクセで、ついギロリと険悪な視線を向けた俺と、

なにコイツ? と言わんばかりの無愛想な顔で振り向いた隼人にも、

全く意に介した様子なく、そいつは屈託のない笑顔で


「俺は町方同心の日向志津摩と申します」


と名乗った。


「ヒュウガシヅマ?」

「はい! 円士郎様には以前、例の貸元の店先でもお会いしたのですが……」


銀治郎の所で俺が神崎と刀を合わせて、留玖が割り込んで止めた時のことだろうか。


「円士郎様の剣の評判については以前からお聞きして、その、憧れておりまして!

あの時、渡世人の下帯を切った目にも留まらぬ居合い技!
続けてあの神崎様に斬りつけた玉響(たまゆら)の動き!

実際に目にして、感動しました! まさに武芸の家と名高い結城家の御子息です!」


日向志津摩と名乗った若者は、人懐こそうな丸い目をキラキラさせて力説した。

へえ。
憧れていたなどと言われ、俺はたちまち気分が良くなってにやついた。
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