恋口の切りかた

 【剣】

狐の屋台を目撃した晩に、イジワルそうな円士郎の顔を見た時の嫌な予感が的中した。

私が怖がりだと知って、何か企んでいそうだと思ったら



まさか、怪談と肝試しをやると言い出すなんて!



円士郎が企画したのは、肝試しの時間を丑三つ時に合わせた結構本格的な催しで、

どんな手を使って了承をとったのか、はたまた内密なものなのか、風佳も今晩は結城家の屋敷に外泊するということで、彼はさっさと大河家と話をつけてしまっていた。

円士郎って、こういう時は行動力ありすぎだよ……。

うう、父上が留守なのをいいことに!


しかも、肝試しの前に百物語のやり方を真似た怪談を行う場所として選ばれた部屋というのが──結城家の屋敷の一番奥の、私は気味が悪くて絶対に近寄らないことにしている空き部屋だった。

どう考えても私への嫌がらせだとしか思えない。


円士郎は参加者として、私と風佳、冬馬の他に、
鬼之介や鳥英、遊水も集めていて、

そして信じられないことに、みんなこんな怖い催しに乗り気だったらしい。


こうして、

じめじめしたなま暖かい風の吹く初夏のある夜、
五ツ半の時の鐘を聞き終えた時分に、屋敷の奥の一郭で恐怖の催しは決行されることになってしまったのだった。


エンのばかばか!


私は直前まで思いきり嫌がって抵抗したのだけれど……そうしたら、私を引きずっていた円士郎は痺れを切らした様子で、また私は抱え上げられてしまった。

しかも円士郎はそのまま足で襖を蹴り開けて、皆が揃っていた部屋に私を抱っこしたまま入っていって──


その場にいた全員が、ぎょっとした顔になり、


私は真っ赤になった。
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