君があたしにくれたもの
第二章

新しい世界

入学式当日、まだ着慣れていない制服に身を包み、彩夏は緊張した面持ちで〇〇高校に足を踏み入れた。
地元の学校なだけあって、同じ学校の子や顔馴染みがたくさんいる。
彩夏は友達数人と固まって、先生から指示が出るのを待っていた。
「なんか、思てたんとちゃうなあ。なんやろ、入学式て感じちゃうわあ」
同じ中学の沙世と辺りを見回した。
2、3年生はいなくて、先生たちの姿も見当たらない。
ただ体育館の真ん中に、入学する生徒の数だけ椅子が並べられているだけだった。

しばらくして、先生が何人か出てきて椅子に座るように指示された。そして、想像していたものとは全く違う、なんとも殺風景な入学式が始まった。

中学みたいに、生徒会長からの言葉とか、いろいろあるのかと思っていたけれど、そんなもの全くなくて、気付いたら終わっていた。



入学式が終わると、1年4組へ彩夏は移動した。
クラスの中は、友達はおろか、知り合いすらいない。
やだな。
人見知りの彩夏にとって、自分から話し掛けるなんて簡単にできることじゃない。
緊張した面持ちで彩夏は自分の席についた。
ゆっくり辺りを見回すと、もうグループを作って楽しんでいる人達が何人かいた。
「はぁ…」
自然と漏れるため息。


この日、クラスメイトとは一言も言葉を交わすことなく、高校生初日は過ぎていった。







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