【短】涙が出るほど好きだった





「うん……。いたけど、」




一番聞きたくない言葉。

奥歯をきゅっとかみ締めた。





「いたけど。別れちゃった。」




硬直した。





「…そ…う…ですか。」




「このさいはっきりいうね。あたし……奏が好き。奏が好きだったってことに気づいたの。」




次に出てくるこの言葉は完璧に分かっていたはずだった。


でもきいた瞬間胸がずしんと沈んだ。




「…あたしあなたには悪いけどひくつもりないよ。」




香織さんの目があまりにもまっすぐで。

そういう口調があまりにも強くて。

何も言い返せなかった。



次にまぶたを開くと彼女はもういなかった。




…最も恐れていたライバルが現れた。








< 14 / 51 >

この作品をシェア

pagetop