【短】涙が出るほど好きだった
「うん……。いたけど、」
一番聞きたくない言葉。
奥歯をきゅっとかみ締めた。
「いたけど。別れちゃった。」
硬直した。
「…そ…う…ですか。」
「このさいはっきりいうね。あたし……奏が好き。奏が好きだったってことに気づいたの。」
次に出てくるこの言葉は完璧に分かっていたはずだった。
でもきいた瞬間胸がずしんと沈んだ。
「…あたしあなたには悪いけどひくつもりないよ。」
香織さんの目があまりにもまっすぐで。
そういう口調があまりにも強くて。
何も言い返せなかった。
次にまぶたを開くと彼女はもういなかった。
…最も恐れていたライバルが現れた。