キラめく堕天使

「行け!」

 言われるまま、広くなった方に出た。

「おお、コレは美しい。」

 何がだろう?

 考えて、そいつらの視線が自分を隅々まで眺めまわすのを感じた。

 穴を掘って逃げたい気がした。

 しかし、ふと気がついた。

 そういえば、今はキレイなフィックスの見た目を借りているんだった。

 美しいと言われた、コレ、とはオレのことなのだ。

 なんかこそばゆい。

 生まれつきキレイな人が、自分のキレイさを自覚するときっていうのはこんな感じなんだろうか。

「よくぞまいられた。フィックスは低級魔族ながら、超低級魔族の巣くう森からこちら側へは滅多に来ない。まことにあり難いことだ」

 地図を広げていたのと覗き込んでいたのは、えらそうだと思ったら、案の定ひげを生やしていた。

 白くくちばしの根元から伸びた髭のせいで、顔の半分、つまりくちばし全部が隠れてしまっている。

「ほう、フックスとはこれほどキレイなのか」

「上級魔族のビックスは更にキレイらしいぞ」

「なるほど、それはぜひとも手に入れたい」

 手に、入れたい?

 オレはまた矢尻で突付かれた。

 中にもう一歩踏み込むと、さっきまで死角になっていた場所に、木製の扉が取り付けられているのが見えた。

 その両脇を、高いところに置かれたランプが照らしている。
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