キラめく堕天使
いや、だから、オレに宝石の知識はないんだったら。

 なのに、どうしてか、その色石が何なのか分かる。

「それに座れ」

 オレは黄色くちばしが短い指で差した先を見た。

 左手の壁の傍にオレの目の高さより上に設えられた、玉座があった。

 金メッキ、じゃないな。

黄金を彫ったか加工して純度百パーセントで造られた椅子だった。

 赤いビロードを両脇に垂らせたその長い台も、すべて黄金だ。

 オレは、それによじ登らなければならないらしい。

 足にかかるものはない。

足元の金の山を踏みしめても手がやっと椅子のひじ掛けにかかる程度だった。

オレはザラリとする手すりに捕まって、自分の体を引き上げた。

ちょっと軽度肥満入りかけていた元の体と大違いで、フィックスの体は軽かった。

 それに、腕の力もオレほど非力ではなかった。

 ますます、このフィックスが黙ってオレに乗っ取られているのが不思議になる。

 オレは玉座のひじ掛けに這い上がった。

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