キラめく堕天使

 アメシスは自分で宣言したように、下りる、というよりは落ちるスピードで深い谷を降りていった。

 前後には、黒い岩が狭い裂け目を造ってそびえている。

 二人が通れるギリギリの隙間も、アメシスは急下降しながらも上手にすり抜けてくれた。

「いやん」

 ちょっと、羽根を岩肌にこすったらしかったが。

 オレは全身から血の気を引かせながら、目を閉じた。

 ジェットコースターでも、ここまでスリルは味わえないだろう。

何と言ってもあれは完全な安全が確保されている。

 こちらはといえば、操縦手すら、コントロール不能気味の急降下である。

 恐る恐る目を開けて下を見た。

 暗い底に、青い筋が見えてきた。

 川が横たわっているらしい。

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