キラめく堕天使

 先人は、一体ここへ何のために足を踏み入れたのだろう。

 手を突いて昇れるほどの急な坂に木が垂直に生えている。

 傾いたからくり屋敷に足を踏み入れたような、感覚の気持ち悪さに捕らわれる。

 何だここは。

 城の足元まで上り詰めたハズなのに、目を上げると、城の姿は忽然と消えていた。

「えっ?」

 たどり着いた平地に立ち尽くしていると、追いついてきたエレナが肩を叩いた。

 振り返ってエレナを見ると、エレナは後ろを指差した。

 そこに、さっきまで目の前に見えていたハズの城が見えた。

「何で!?」

 オレは踵を返して、エレナに押し戻された。

「騙されないで。目だけを信じちゃだめ」
 じゃあ、何を信じればいいんだ?

 エレナの灰色の目を覗きこんだ。

 銀髪が、陽に照らされて、キラキラ輝いている。

 陽の下で見るほうが、エレナはキレイだ。

 必死だったオレは今頃それに気付いた。

 そして、エレナが傷ついた心のままでいることにも。

 濃いグレーの目の奥に、ぱっくりと口を開けた傷口が見える。

 
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