キョムソーヤの茶番世界
思いは儚く、男は俺のうえを軽がるとまたいで通り過ぎていった。

「俺はこのまま死ぬんだろうか・・・」

行過ぎる人は多いが、しかし俺のことに気づく人間なんてひとりもいなかった。

どうしたことか俺は自分の身に起きていることを冷静に考え出した。

どう考えてもおかしいじゃないか。
人が倒れているのに誰も助けようとしない。
ありえないことだ。
人が変わってしまったのか?
それとも俺自身が変わってしまったのか?

そのとき俺はある小説のことを思い出していた。
それは、中学生のときに読んだ「変身」という小説だった。
うる憶えながら、この小説の物語は確かこんな物語であったような気がする。

ある日、成年が目を覚ますと巨大なカブトムシになっており、得体の知れない怪物となった成年が父親母親そして大切に思っていた妹から誹られ、その家族に致命的な傷をやがて衰える。
最後には、怪物のような醜い昆虫としての死んでいくのを拒絶し、自分の意思をもってして窓から飛び降り自害するという物語だった。
< 3 / 8 >

この作品をシェア

pagetop