キョムソーヤの茶番世界
第3章
俺は蝉だった。

しかし、死にかけの蝉。

俺の体はどこへ行った?
まさか蝉が俺の体と入れ替わってはいまいか?
どうしたことかこんな小説や映画地味たことが起こるのか!

何か俺が悪いことでもしたか?
俺は因果なことはした覚えもない。
女の恨みも買った覚えがない。

はたして人間が昆虫ごときになるものか?
カフカではないか?
俺が病んでいるだけか?

これは俺の妄想にしても、覚めない悪夢にしても冗談地味てひどすぎる。
だれも夢にも思わないことだろう。

蝉に生命保険はきくのか?
この哀れな俺の死をいたわり葬式、いや花一束でもいい、誰か俺の死を知ってくれるか?

俺は一人でぶつぶつ、ぶつぶつと呟いた。

どうしようにもないのか?

俺の目のまえに紺碧の壁が立ちはだかり、閉塞して窮屈な現実がまるで首をしめるように俺は混乱して悶絶を繰り返していた。

それから俺が完全に動かなくなったのは、通り雨が振ってきて路上を濡らしてからだった。
駆け足で雨に濡れまいとする人間を横目に、俺の体は雨に打たれ、路上を濡らした雨水にすっかり羽を浸からせてしまった。
どうにも自分の力では及ばす、体力を失った。

そのままこの体は重たくなった羽を不細工に広げたまま、天をつかもうと足をあげた節が硬直し二度と動くことはなかった。
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