グリンダムの王族
アランが部屋に来ると、セシルは部屋の扉の所で彼を出迎えた。
侍女はすでに退出している。
セシルはアランを迎え入れた後扉が閉まると、そこで立ったままじっと彼を見つめた。
アランも同じように彼女を見ている。

「久し振り」

セシルが呟いた。アランはふっと微笑むと、「そうですね」と応えた。

実際はほんの数日呼んでいないだけなのだが、
セシルの中ではけっこう我慢したつもりだった。
アランの真っ黒の優しい瞳を見ながら、
セシルは昼にラルフに言われた言葉を思い出していた。

”アランに惚れても未来はないと言っておいたはずだ”

確かにかつてそう言われたことがある。
あれはまだセシルが興味本位で色んな男を部屋に呼んでいた頃だった。
アランを呼んだことを知った兄が即座にそう言った。

当時セシルは目をパチクリさせながら、”なに言ってんの?”と返した。
突然そんなことを言ってきた兄の意図が分からなかった。

あの頃から、ラルフの中でアランは他の騎士達とは違う存在だったのだろう。

今日の兄の言葉は、昔と全く同じなのに、全く違う響きに聞こえた。
けれどもその意味を考えたくはない。

セシルはそんなことを思いながら、アランの首に腕を回して彼を抱きしめた。

「アラン、ラルフをよろしくね」

アランは耳元で聞こえた意外な言葉に少し驚きつつ、「ラルフ様を、、、?」と聞いた。

セシルが頷く。
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