グリンダムの王族
ファラント王国では王子の婚儀を間近に控え、式を挙げる神殿で儀式の手順を確認していた。
白い壁に包まれる神殿はいくつもの柱で支えられ、その一本一本に見事な彫刻が施されている。
高い位置にある窓から差し込む光が聳え立つ神像を照らし、それをいっそう神秘的に映していた。
クリスとセシルはその神像に向かって並んで立っていた。
彼等の前に立つ神官が説明を続ける。
それを聞きながら、2人の目がお互いを見ることは無い。
セシルがファラントに来てからの数日、クリスとセシルの間に全く会話は無かった。
「次にファラント紋章の授与でございます」
言いながら神官が立派な台座に載せられたファラント王家の紋章の首飾りを取り出した。それはセシルのために改めて作られたものだった。
クリスの首に戻った首飾りと、同じものである。
「王子、私が参列者にこれを掲げてお見せした後にお渡ししますので、手にとって頂いて、お妃様の首に着けて差し上げてください」
そう言って神官はクリスに首飾りの台座を差し出した。
クリスはそれをちらっと見ると、「分かった」と言った。
神官が戸惑ったようにクリスを見ている。
セシルは彼の存在など無いかのように、じっと前を見ている。
「やることは分かった。
今はやらなくていい。次に行け」
クリスは神官に向かって、ぶっきらぼうに言った。
「、、、かしこまりました」
神官は首飾りをまた元に戻すと、「では、次に、、、」と説明を続けた。
セシルはそんなクリスをチラリと横目で見ると、また何も無かったように目を前方に戻した。