グリンダムの王族
―――全く、頭にくる女だ!
―――俺だって一緒に出かけるなんて、ごめんだ!
クリスはぷりぷり怒りながら、1人で城を出ていた。
本来なら1人で出歩くなんて許されないのだが、
宰相には”セシル姫と遠乗りに行く”と嘘をついたので、大喜びで送り出してもらった。
お忍びなので地味な格好に着替え、1人で馬に乗って出てきている。
天気がよく、気持ちのいい午後だった。
思えばファラントでは、1人で城外に出るなどあり得ない。
久し振りの自由は、彼の心を躍らせた。
城から離れ、グリンダムの広い領地を走る。
小高い丘にたどり着くと馬を止めて景色を眺めた。
眼下に広がる街並みは、どこまでも果てしなく広がって見える。
「、、、広いな」
クリスは思わず独り言をもらした。