グリンダムの王族
街に向かうため馬を進めていると、綺麗な湖のほとりが見えた。
なんとなくそこに目を向けると、
1人の少女と馬が並んで湖に向かって立っている。
休憩中なのだろう。馬は水を飲んでいるようだった。
クリスは自分の馬を見ると、「お前も、飲むか?」と言いながら、
馬の首を湖へと向けた。
「こんにちは」
クリスは馬に乗ったまま、湖のそばにいる少女に声をかけた。
少女がクリスを振り返った。
亜麻色の長い髪を両側におさげに結ってある。
髪と同じ色の大きな瞳が、クリスをとらえた。優しい雰囲気の、
可愛らしい少女だった。
「こんにちは、、、」
少女はためらいがちに挨拶を返してくれた。
初めて見る男に、多少警戒するのは無理もなかった。クリスは馬から降りた。
そして馬を引いて湖の水を飲ませる。そうしながら、また少女に目を向けた。
「くつろいでるところ、邪魔してごめん」
少女は首を振って、「いえ、、、」と言った。
「この辺りに住んでる子、、、だよね」
クリスが聞くと、少女は頷いた。
「タトルの村です」
村の名前を言われても、クリスには分からない。
クリスはちょっと笑うと、
「聞いておいて悪いけど分からないや。俺はこの国の人間じゃないんだ」
と言った。少女は目を丸くした。
「外国の方なんですか、、、」
そんな表情もとても可愛らしい。クリスは少女と話を続けたくて、「うん。ファラントって知ってる?」と聞いてみた。
少女は首を振った。
「私、外国には行ったことがなくて」
少し申し訳無さそうだ。
「俺もグリンダムは初めてなんだ。広くて綺麗なところだね」
実際来るのは初めてである。もっと他の理由で来たかった気がする。少女はクリスの言葉に笑顔を見せた。
「ありがとうございます。外国の方にそう言ってもらえると、嬉しいです」