グリンダムの王族

ファラント王国の王子夫婦は、天気がいいのでそろって遠乗りに出かけていた。

2人の時間を欲しがるクリスのために、今日はセシルの方から誘ってみた。
本来なら2人だけでの外出は好ましくないのだが、ゴードの脅威すら無くなった今、2人で出かけるという我侭も通るようになっている。

2人は林の中の川辺で並んで座って休憩している。
2人の馬が並んで水を飲んでいる。
木々の間から差し込む木漏れ日が、川面を美しく光らせていた。

「綺麗、、、」

セシルは独り言のように呟いた。

「綺麗だな、、、」

そう呟くクリスの声に、セシルはクリスを見た。
いつものように彼はじっと自分を見ている。
どうやら景色には興味が無いらしい。

「せっかく遠乗りに来たんだから、景色を見たほうがいいわよ」

無駄と知りつつ、一応そんなことを言ってみる。

「景色なんて、いつでも見れるし」

クリスが言った。

「私のこともいつでも見れるって」

セシルが即座にそう返す。

「、、、だったら、好きな方見てていいじゃん」

言いながらクリスが顔を寄せる。
セシルはそんなクリスを見ながら、

―――やっぱりこの展開なのね、、、。

と思っていた。
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