男子、恋をする

「あの光景ってどういうこと?」


問い返した乙部と答えを待つ俺と那津の顔を順番に見回し、


「実は……」


重々しく口を開いた会長は眼鏡を指先でただして眉を顰めた。


そんな渋い顔するなんて……一体どんな光景を見たってんだよ。
もしかして藁人形に五寸釘なんてことじゃ……。


あのポーカーフェイスにそのアイテムは恐すぎるだろ!
そんなことされたら俺……絶対に泣いてしまう。


勝手な想像で一人肝を冷やしてる俺に、


「最近急に女子向けのティーン雑誌が家に増えたと思っていたんだが……」


「…………」


「それを傍らに毎日毎日鏡に向かって笑顔の練習をしていたんだ」


会長から放たれた重い一言が張り詰めた空気を一瞬にしてモヤモヤに変えた。


決して会長が発したティーン雑誌なんていう不似合いな単語のせいじゃないことは百も承知。


お揃いの顔で呆然とした俺たち3人の頭を同時に過ぎったのは……笑顔の練習をする最凶のポーカーフェイスの姿。


これはとんだ誤算だ……。
なんか別の意味で泣けてくるかも、俺。



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