男子、恋をする
バイトなんて自分の勝手でやってんだろ。
人に迷惑かけてんじゃねーっての。
イライラついでに頭の中で愚痴ってたら、
「あっ」
黒板消しを握った女子が寿梨であることに気付いて、思わず立ち止まってしまう。
そんな俺には気付かず、黒板を綺麗に消し終えた寿梨は歪んだ机を並べ直し、最後に戸締まり。
一人でいそいそと日直の仕事をこなしていた。
廊下側の窓を閉めようとした時、
「っ!!」
廊下に居た俺に気付いて、鍵に指を掛けたまま固まった。
しまった……うっかりして堂々と観察してしまった。
ガラス越しに固まった寿梨にとっさに愛想笑いを浮かべたけどもう遅い。
……行こ。
俺が居たら寿梨は、この教室から出て来ないかもしれない。
そう思って足を踏み出そうとした時だった。
「……あっ」
閉めかけの窓から吹き込んだ風で、寿梨の枝垂れた前髪がふわっと上がる。
不意に見えた寿梨の顔に目をやると、いつも隠れている額が赤くなっていた。