男子、恋をする
空っぽの保健室でオドオドしっぱなしの寿梨をベッドの縁に座らせ、ビニールに氷を詰める。
「ひゃっ……」
ちょこんと小さい背中を丸め、陰気オーラ全開の寿梨の額に氷の入ったビニールを当てた。
氷の冷たさに驚いた寿梨が、傍らに立った俺を黒縁の隙間から窺う。
「あっ……自分で、やります……」
「冷たいから俺持つよ」
「で、でも」
氷の入ったビニールに手を伸ばした寿梨に頑として譲らない俺。
しばらくそうしていたけど観念したらしく、寿梨はおずおずと手を膝に戻した。
よし、俺の勝ちだな。
まだ俺とはまともに視線を合わせないけど、とりあえず逃げなくはなった。
相手はダサ子だってのに、そんなことで満足してる俺は……意外と小心者だなって実感してしまう。
「あ……の」
「えっ……?」
頭の中でブツブツと独り言を繰り返してた俺を、斜め下から震える声で寿梨が呼んだ。
ハッとした視界の中では、寿梨が首をこちらに向けて俺を見上げていた。
おっ。
思いがけず第二関門突破。
寿梨が自分から視線を合わせて来た。