男子、恋をする
「あの……なんで、ボールぶつけたって……」
なんて一人ぬか喜びしてた俺に、寿梨の不審そうな視線が刺さる。
……確かに脳内の記憶を巻き戻したら、迷いなくボールにぶつかったって言った自分が居る。
あの時の俺のバカ……。
「窓から見えたから」
正確には見てた、から。
しれっとした澄まし顔で答えた言葉に、見られた恥ずかしさからか寿梨は頬を赤く染めてる。
一応嘘は言ってないぞ……。
「あ……ごめんなさい。わざわざ……」
こう言って申し訳なさそうに寿梨が頭を下げたら、ビニールの周りについてた雫が顔を伝っていった。
寿梨の黒縁に雫が垂れ落ち、
「あ……」
メガネを外した顔が、俺の目に飛び込んで来る。
いつも枝垂れてた前髪も氷で冷やしてるせいで避けられてて、寿梨の素顔が露わになった瞬間だった。
寿梨が顔を滴る雫を指先で払おうとした時、
「あっ……ありがと」
とっさにポケットから差し出したハンカチを受け取った寿梨は、俺を見上げて柔らかく笑う。