男子、恋をする
「ロミジュリっていうより人魚姫じゃないの」
「舞踏会での出会いはシンデレラだな」
「ははー。じゃあ会長は馬車馬役だね! 鮎花姐は魔女」
「却下だ」
「却下よ」
バカ笑いするバカ那津に、君原兄妹のツッコミが綺麗にハモった。
さすが双子。
バカ那津を一瞥する呆れた表情まで同じだ。
「素敵でしょ? 女の子の憧れや願望を詰め込んだ珠玉のお姫様ストーリー!!」
「あ……ぅ」
その肝心なお姫様は相変わらず陰気で暗い雰囲気を湛え、会長の隣で所在なさげに身を竦めていた。
自分の生み出したシナリオに酔いしれる女版那津の乙部の目が空中を仰いだまま固まってる。
ていうか、完全にイッちゃってるな。
「でもでも、口がきけないって設定ジュリエットちゃんには持って来いじゃん!」
「でしょ!! 台詞はただ一つ! ヒロインの最大にして最高の見せ場゛愛しています、さようなら゛……キャー!!」
「うるさいわ」
面白がる那津と一緒になって興奮する乙部に、君原妹の抑揚の無い冷淡な声が浴びせられた。
寿梨は台詞の恥ずかしさで更に俯いている。
……ホントに大丈夫なのか。