男子、恋をする
俺の心配を余所に、
「それじゃあ早速、青年が姫とバルコニーで出会うシーンから行ってみよう!」
「はーい。ジュリエットちゃんはこっちこっち」
メガホンみたく台本を丸めた乙部が、バンバンと机を叩いて声高に叫んだ。
それに合わせて那津が寿梨の手を引き、俺の前へと連れてくる。
あたふたと為すがままに連れて来られた寿梨は、
「ぅっ…………」
目の前の俺と視線が重なるなり、
「っ!!」
俯いて完全に下を向いてしまった。
……なんでそうなるかな。
今朝もそうだった。
昨日、保健室を出たまでは良かった。
普通にはにかんでて、好感触だって喜んでたのに……。
今日の朝、女子たちの群を通り抜けて靴箱を開けた瞬間、
「…………」
俺のうわぐつの上には、見慣れたハンカチが丁寧に畳んで置いてあった。
もちろん、昨日寿梨に貸したヤツ。
てっきり直接返してくれるもんだと思ってたから、完全に肩透かし食らったな……。