男子、恋をする
しかも今この部屋には、俺を含めた三人しか居ない。
君原妹と乙部が衣装を見に行くのに、バカ那津が便乗して出て行ったのが十分前。
それからずーっと、
「右右左……右右左」
「……右右左」
この部屋は二人の世界。
さながら、星空の下のバルコニーで踊る二人きりの舞踏会……だ。
隅っこで台本読んでる俺なんて、せいぜいバルコニーの柱か……はたまた名も知らない観葉植物か。
とにかく、限り無く空気に近かった。
廊下を歩けば声を掛けられないことが無い俺が、今は部屋の片隅で見向きもされない。
……人気者の模範生徒の名が泣いてるな。
「………」
ダメだ。
居たたまれない。
居心地の悪さは頂点に達して、台本を机に置いて椅子から立ち上がった。
とにかく気分転換しよう。
じゃないと俺、このまま存在感が滅する気がする……。