男子、恋をする
これ以上隙間から覗いてるのも気が引けて、ゆっくりと生徒会室の扉を閉じた。
こんなところを見られでもしたら、今度こそ性犯罪者一歩手前の人間にリーチがかかる。
なんてブツブツと頭の中で独り言を吐露しながら、来た道を戻ろうと身を翻した瞬間。
「…………」
「っ!?」
目の前に君原妹の顔面があって、心臓が縮みあがる程ビビった。
愛想笑いなんてもってのほかで、一瞬忘れかけた呼吸をゆっくりと吐き出してみるのが精一杯だ。
そんな俺に構うことなく、君原妹の切れ長の瞳は物言いたげに俺を見つめている。
それがなんか気まずくて、視線を逸らそうとしたら、
「昨日の朝も見てたでしょ、寿梨のコト」
ツンと澄んだ声にこう言われて、背中にゾクリと冷や汗が伝う。
……寿梨観察がバレた。
ヤバい。
性犯罪者一歩手前に加えてストーカーなんて、人気者の模範生徒の面子が危うい。
ていうか、人間としての尊厳に関わる。
とっさに頭を駆け巡る最悪の事態に、顔の温度が急激に冷えていくのがわかった。