不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
また、昨日止まった信号に引っかかった私。
ただ、昨日とは違い、今日は信号待ちに多くの人がいた。
その姿をみれば、みんな会社に向うサラリーマンか学校に向う高校生ということがわかる。
急にその信号待ちの集団が私の横で割れる。
誰かが私の横に割り込んできた。
(・・・はぁ~。)
私は、見なくても、周りの人の行動を見れば想像ついたけど、一応、横を見てみる。
(やっぱり・・・)
そこにいたのは、私の想像と1ミリも違わず、山下コウがしかめっ面で立っていた。
しかも、その顔には、昨日とは違い無数の絆創膏が貼ってあった。
(ただでさえ、金髪なのに顔に絆創膏まで貼ってあっては、そりゃ、みんな道を開けるよね。)
心の中でため息交じりにつぶやく。
「おはよう、コウ。」
さすがに無視は出来ず、挨拶する。
「おう、ルミ。」
しかめっ面のまま答えるコウ。
その唇の端が少しピクついてるのが見えた。
うれしいのを我慢しているような表情。
(そんなにうれしいなら、素直に顔に出せばいいのに・・・)
ただ、人前だからってぶっきらぼうぶるコウに少し意地悪したくなる。