不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
(・・・!コウのせいだ。)
私は、自分が満員電車の中で快適に立っていられるわけを悟った。
こうなると、コウに文句を言っていいものか迷ってしまう。
周りの状況を見ると、とてもじゃないけど私には我慢できなさそうな込み具合。
「・・・悪かったよ、ルミちゃん・・・」
コウが、私の耳に顔を近づけて小さな声でつぶやく。
「・・・いいよ。」
私は、しょうがないといった感じでコウに答えた。
だって、ここでコウと喧嘩して、コウが離れると私は、たちまち人ごみに押しつぶされてしまいそうだったから。
コウは、本当にうれしそうな笑顔をつくる。
その笑顔だけは、昔のコウのままだった・・・いや、私と2人の時のコウの性格も昔のままだったけど・・・。