不思議の国のアイツ -暴走族総長純情伝-
「どうしたの?」
「うん。あんなに込んでいるのに、田村くんの近くだけ凄く空いてるの。・・・思い出したら、可笑しくなっちゃって。」
「・・・こっちもそう。コウの周りだけ、空いてるの。」
私とマイは、目を合わせて笑う。
「ジュン!行くぞ!」
そんな私達を置いて、コウが不機嫌そうに田村ジュンと一緒に歩いていった。
「あ、ありがとう。田村くん・・・山下くんも。」
そんなコウとジュンにマイが急いで声をかける。
コウは、何か言いかけたが、結局、何も言わずに歩いていった。
私は、そんなコウを見て、コウの後ろを歩いているジュンが少し笑うのが見えた。
「・・・山下くん、もしかして、何か怒ったのかな?」
マイが少し困ったような表情になる。
「さあ?ほっとけばいいんじゃない?」
私は、昨日の家の前のことがあったから、なんとなくコウが不機嫌な理由は想像ついたけど、口からは気づいてないフリの言葉が出てきた。
「あんな奴ほっといて行こう、マイ。」
「・・・うん。」
マイは少し落ち込んだ様子だったけど、私に合わせて歩き始めた。