昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

勢いに押されるウチを棒立ちにさせて、手際よく着付け始めたお母さん。

浴衣着たの何年も前やと思うねんけど…せやのに慣れた手つきでスイスイ進めるから、少し驚く。

そういうのって覚えとるもんなんかなぁ。


左、右。前で浴衣を合わせながら、お母さんがウチを見上げた。


「…アンタ、おおきなったねぇ」

「前からデカイやろ」

「いや、そうやなくて…」


お母さんは少し笑って、今度は帯のために後ろに回った。


「やからぁ、ちょっと女らしいなったんちゃうかって」

「───へ」

「祭りに一緒に行くん、彼氏なん?」


そんでいきなりそんなこと言うてそんなこと聞くから、ビックリして息1回し損ねた。


「どうなんよ」

「か…………彼氏っていうか…かれ、うん、彼氏?かなぁ…」

「ハッキリせんかいな」


だって21年間生きてきてこんな話するん初めてやんか。そりゃ動揺もするわ!

彼氏。言い慣れへんし聞き慣れへん単語。

そもそもアレってどっちの発音が正しいん?"し"が上がる方?下がる方?…どっちや。


「ぐぇっ」

「こら、姿勢崩さない!」


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