昼暮れアパート〜ふたりは、いとこ〜

キュって帯しめられて、ニワトリの失敗した鳴き声みたいなんが口から出た。

しばらく我慢しとったら、はいおしまい!って満足げなお母さんに尻をたたかれる。

強引に鏡んとこに連れていかれて、ウチは大和撫子とご対面……いやごめんなさいすんません言いすぎにも程がありました。



でも、な。



「長さ大丈夫やわ。なあ、優子」

「……うん」

「似合とるで、案外」

「………」


てっきりけなされるかと思てたから。


「……うん、どうも」


ほめられるなんて思わんから、うまく対応しきれへんやんか。

めちゃめちゃ似合うわけでもないけど、ネタになるほど面白いモンでもない。中途半端やなぁ。


さっき見たアルバムの写真の断片が浮かぶ。

無邪気な笑顔。手に持った金魚と、浴衣にはそのヒレにそっくりな金魚帯。


今腰に巻かれてるんは、小学校の頃のヒラヒラした金魚帯やなかった。


…しっかりした、大人の帯やった。



「そういやまさるくん、元気?」


ごく自然に、お母さんの口からかっちゃんの名前がすべり出た。

もうちょい上かなぁ〜とか呟きながら、一生懸命帯をしめなおす。


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