キミは聞こえる
間隔を取って、泉は右手に警棒を、桐野は利き足でボールを踏み押さえる。
「行くぞ」
「本気でどうぞ」
付き合うからには試合に役立って欲しいと思う。
桐野の目だけをまっすぐに見つめる。
桐野の頬が僅かに引きつった。
三歩下がった桐野の顔に真剣以外の余計な感情は見受けられなかった。
足側面がボールにぶつかった。
泉は即座に桐野から見て左上の角へ警棒を指した。
瞬間、桐野の目が驚きに揺れたのを、泉は見逃さなかった。
風が唸る。
白と黒二色で構成されるボールは高速回転がかけられ、白一色にしか見えなかった。
空を切るように、軌跡を描いてボールは飛んでくる。
泉のすぐ横をボールは強風のように一瞬で通り過ぎ、柱へと突進した。
桐野の予測は見事に見破られ、しかしあの場で軌道修正を図るには時間が足りなかったらしい、焼け焦げたようなたくさんの跡が残る左角に吸い込まれるようにボールは向かっていった。
たむたむと、ボールは地面に落ちる回数を重ねるごとに徐々に跳ねる高さをなくし、力なくころころと転がりながらやがて桐野の足に帰っていった。
利口なボールだ。
「行くぞ」
「本気でどうぞ」
付き合うからには試合に役立って欲しいと思う。
桐野の目だけをまっすぐに見つめる。
桐野の頬が僅かに引きつった。
三歩下がった桐野の顔に真剣以外の余計な感情は見受けられなかった。
足側面がボールにぶつかった。
泉は即座に桐野から見て左上の角へ警棒を指した。
瞬間、桐野の目が驚きに揺れたのを、泉は見逃さなかった。
風が唸る。
白と黒二色で構成されるボールは高速回転がかけられ、白一色にしか見えなかった。
空を切るように、軌跡を描いてボールは飛んでくる。
泉のすぐ横をボールは強風のように一瞬で通り過ぎ、柱へと突進した。
桐野の予測は見事に見破られ、しかしあの場で軌道修正を図るには時間が足りなかったらしい、焼け焦げたようなたくさんの跡が残る左角に吸い込まれるようにボールは向かっていった。
たむたむと、ボールは地面に落ちる回数を重ねるごとに徐々に跳ねる高さをなくし、力なくころころと転がりながらやがて桐野の足に帰っていった。
利口なボールだ。