蒼い太陽
リリがずぶ濡れであることが少し気になるが、取り敢えず今はこの状況を早く理解したかった。


「お、お母様…それ!」


ダリアが何かに気がつき、口に手を添えながら慌てたように声を発した。


それを見たリリが少し微笑む。

「そう…これは星族の族宝よ。湖から少し強引に取り出してしまったから、水に怒られてしまったわ。」


そう言って、リリは手に持っていた物を皆が見えやすいように胸の前に持ってきた。


それは、金色に輝く鏡のようだった。


鏡、と言っても金色の光りが溢れているため何かを映している場合ではないようだ。


「発動…したのですね。」


ミシャがリリを見ながらぽつりと話しかけると、ユウやアヤトがはっとしてリリを見た。


「えぇ…、あなた方をここへ移動させるためにね。本来、星族の族宝は癒しの魔法を使役するためのもの。

移動魔法は管轄外なのだけれど、“生きている者を安全な場所へ”という私の願いは族宝に届いたわ。

この願いを癒やしに結びつけるのは少し無理があったみたいね、こんなに水に怒られるなんて思ってもいなかったわ。」


リリの瞳が優しくフィリシア達を捕らえていた。


「サダや他の者達は…」


レガートがアヤトに問うが、アヤトの顔を見て表情を暗くし、俯いた。


「救えなかったか…」


< 314 / 352 >

この作品をシェア

pagetop