Anniversary
今日は、俗に言う“中秋の名月”とやらを観ることのできる日。
もちろん我が《天文部》でも、部内で3年生の先輩方発案による“お月様鑑賞計画”とやらが、持ち上がっていた。
その“天文学的な観点と昔ながらの伝統を交えて月の美しさを楽しもう”という意味わかんないコンセプトを聞いて、即座に愛想笑いで、よくわからないながらも、ウッカリ『へえ、おもしろそうですねー』と同意を返してしまったのが悪かった。
――つまり、それは同時に、私の“参加表明”になってしまったらしい。
『よし、じゃあ小泉(こいずみ)は薄担当な。当日、花瓶と薄を持参してくること』
言った途端に何の説明も無くそんな指令を下されてしまった。
はあ!? と、即座にしかめっ面になって撤回を求めようとしたその鼻先で、『決定!』と、そうビッシと指まで突き付けられて言われてしまっては……撤回できようハズも無い。
まあ、薄の生えているトコロは知っていたし、それほど無理難題でもなかったから、とりあえずは頷いてみたワケだったのだけれども。
会場である屋上には、シッカリ天体望遠鏡がセッティングされていた。
その隣には……月見団子を盛った皿を載せた机。
(―――よーするに……これが“天文学的な観点と昔ながらの伝統を交えて”という、例のコンセプトですか……)
何のこっちゃない。ただ単に“観測会”しながら“お月見”するだけじゃんか……。
半分あきれて軽くタメ息を吐きつつ、私は持っていた薄の花瓶を、その月見団子の皿の隣に置いた。
その横に並べて、みっきー先輩が運んできた机を下ろす。