Anniversary
「おー、シッカリ準備できてるじゃん。――お疲れ、三樹本(みきもと)」

 歩み寄りながら、みっきー先輩へ労(ねぎら)いの言葉をかけつつ、その足は2つ並んだ机の前へ。

「月見には、やっぱ団子は欠かせないよなー。こうして薄と団子が並んでると、『ああ、月見だー』って、シミジミと感じるわー」

 1歩下がった位置から机を眺めて、満足そうに微笑う。

 …うん、確かに。薄とお団子、これだけでも充分“お月見”の雰囲気は出ているわよね。

 だが、「いやいやいや…」と、みっきー先輩がイミあり気に首を横に振って、そこで口を差し挟む。

「そうは言っても、これだけじゃー、ちょぉっと淋しいやろ」

「まあ…今日のコンセプトは“シットリまったり”じゃないもんな。――じゃ、供え物、もう1品追加」

 そう応えた吉原先輩が、腕に抱えていた紙袋の中から取り出したもの。

 それは大きくて、キレイなオレンジ色の、丸い……、

「―――柿!?」

「そ。俺んちの庭に生(な)ってたやつ。――でも食うなよ、まだ食うには早すぎて渋いだけだぞ」

 あくまでも今夜の“お供え”だと、笑いながら先輩は、机に柿の小山を作ってゆく。

 お団子に、薄に、そして柿。

 よりグッと“お月見”らしくなってきた雰囲気に、はしゃいで私はパチパチと手を叩く。

「うわあい! なんだか、ほんのりゴーカになって雰囲気でてきたねーっ!」

 しかし、そんな私の気分を盛り下げるような……「――甘い…甘いで、桃花!」というみっきー先輩のお言葉と、ニヤリとした笑み。

「そうそう、小泉。こんなんで驚くには、まだ早いぞ?」

 その隣から、吉原先輩もニヤリと笑って付け加える。

「小泉、オマエこの“月見”のコンセプトを、理解してないだろ?」

「は……? こんせぷと……?」

 ――そういえば……今さっきも、『今日のコンセプト』だとか『シットリまったり』がどうとか、言ってましたっけ……?
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