Anniversary

「おや? 珍しく小泉クンが大人しいではないか?」

「ほほう? 何か悪いモノでも食ったのかね?」

「イヤイヤ、おおかた三樹本につっつかれてムクれているのであろう」

「ああ、然り然り」

「その通りじゃのう」

 ほっほっほ、…と、そこでどこからともなく扇子を取り出し笑う“自称《月に感謝を…(以下略)》”の3人は、手ブラになったのをいいことに、ヒマつぶしのつもりなのか、脱力して硬直したままの私の3方向を囲むなり、頭の遥か上でそんな会話を和やかに交わしながら、3つの手でポンポンと何度も軽く頭を叩く。

(―――スイマセン……あんたら、いつもと全然口調が違うんですけどっ……!!)

「何の真似……?」

 わなわなと腹の奥底から湧き上がってくる怒りを抑えつつ、グッと握り締めた拳をプルプル震わせながら、押し殺した声で尋ねた私、だったのだが……。

 しかしアッサリと返ってくる、きれいな三声ユニゾン。


「「「月見に興じる平安の公達(きんだち)ごっこ♪」」」


「――――……っ!!」


 何かが私の中でプチンと切れる音が聞こえた…―――と思ったと同時、思わず手が横に伸びていた。

 伸ばされた手が、そこにあったものをムンズっと掴む。


「今宵の月はどうかのう?」

「天気も晴れじゃ。きっと名月と呼ぶに相応しい月であろうぞ」

「そうじゃな。あとは〈月に群雲…〉と云うこともあるぞなもし、雲が掛からないことを祈るのみじゃな」

「ほんにほんに」

「ほっほっほっほ」


「―――あ、ん、た、らぁーーーっ……!!」
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