魔女のカウントダウン☆

『だけど、久々にめるがいる大晦日ってのも、いいもんだな母さん?』

父が、鼻歌混じりに冷蔵庫からビールを取り出した。
『ですね… さあ、夕食にしましょう』

母が、鍋フタを開けて煮え具合を確認する。
父が杖を椅子に掛けて腰を降ろした。
『今年は、しゃぶしゃぶで年越しかあ…』
『それだけじゃありませんよ』母が刺身の盛り合わせをダイニングテーブルの上に置く。

『めるもこちらに来て食べなさい』

父が手招きをした。

『うん』

テレビの電源を切り、椅子に着席するあたし

だが…ここからが地獄だった。

『貴方、今年一年 お疲れ様でした』
母が、父の差し出すグラスにビールを注ぐと
『いやいや、母さんこそ、お疲れ様でした』
と、父がビールを注ぎ返す。

『いえ、貴方がいるから、頑張れるんですわ』と母が言えば
『いやいや、お前がいるからさ』と父が言い返す。
『今年も貴方と無事に年を越せて、幸せよ』

『わたしも同じ気持ちだよ』
父が、母の肩に手を置く。
『貴方』

『母さん』

見詰め合う2人


近づく、唇の距離


『ちょっと、待ったあー!!』



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