魔女のカウントダウン☆
コンサート会場は、多くの人で埋めつくされていて、熱気をおびて、暖かいように感じた。
名も知らない女性ジャズシンガーの、アップテンポな曲と、ハスキーな歌声に熱狂し、バラードになると、聴き惚れた。
最後になると、そのシンガーは、このゲレンデで恋に落ちた、自らの思い出を語り始めた。
けれど、彼女の恋した彼は数年前に、難病を患い 他界してしまったのだと言う。
シーンと水を打ったように静まり返る観客
『可哀想…』
美紀が、呟き 涙を浮かべた。
同様にあたしの涙腺もかなり刺激されていて、今 瞬きをしたら 頬に一筋涙が零れ落ちるな、と感じた。
幸也が、そっと…あたしの手を握る。
スキー手袋をはめては、いたけど、じんじんと幸也からのあったかい温もりが伝わってきて、…あたしは シンガーが最後に歌うバラードを、幸也に寄り添いながら聴いた。
幸也の手が、あたしの肩にまわる。
魔法は、まだ とけない。
幸せな感情が、心を満たしていた。