姪は叔父さんに恋してる
「おと………、」
強く、抱きしめられた。
あのお父さんにだ。
てっきり、更なる罵声を浴びせられるか、平手打ちのひとつでも飛んでくるかと思っていた私は唖然。
目を見開いて、更に強く抱きしめられる。
「………こんな、分からず屋だとは思わなかった……。」
「…ごめんなさい……。」
「お前みたいな奴は……その男と同等だ…。
顔も見たくない……。」
「……ごめんなさい…。」
「両親の言うことを無視するように…育てた覚えはないぞ………。」
「………ごめん……お父さん…。」
声は酷いことを言ってるのに、私は腹を立てることが出来なかった。
肩に当たるお父さんの目が、じわりと濡れているから。
林檎とナイフを同じ手に持って、開いた右手をそっとお父さんの背中に回す。
背中は、触れてやっと分かるくらいに震えていた。