姪は叔父さんに恋してる


鼻水を啜る音まで聞こえてきて、私はやっと“お父さんが泣いてる”ということを実感した。

何度も優しく背中をさすっていると、お父さんが小さく喋り出す。


「……もう、お前のことを娘と思う気は無い……。中学を卒業したら…我が家を出て行け……。」


今すぐ出て行け、と言わないのがせめてもの優しさか。
泣いてると説得力も迫力も無いけれど、私にはお父さんの辛辣な言葉の裏にある本心が薄く見えた気がした。


「家を追い出されたら…、私はどうしたらいい…?」

抑揚無く…いや、違うな。
少し柔らかな声でそう訊ねると、お父さんも少しだけ落ち着きを取り戻して。


「自分の道は自分で決めなさい……。
どこに住むかも…誰と一緒に生きるかも、お前の自由だ……。」


それは、お父さんが初めて、私と叔父さんを認めてくれた言葉だった。


< 231 / 245 >

この作品をシェア

pagetop