【短編】鐘の音が聞こえる
夢で見た場所と同じ。



そこは、駅前の広場。



誰もいない、寂しい空間…



私は、ひとりで佇んでいた。



辺りを見渡す。



薄暗い街灯がいくつかあるだけで、その下を通る影は見当たらなかった。



やっぱり、夢、か…



諦めて、踵を返した時。



「遅いよ、奈緒…」



私は声のする方へ振り返った。



「俺、5時から待ってたんだよ。」



白い息を吐きながら肩を震わせて、そこにケンが立っていた。



その顔は、笑顔だった。



「ごめん… ケン」



私は震えるケンの肩を抱きしめた。



「…待っててよかった。やっと会えたね。」



ケンの優しい声…



私の耳に響いてくる。








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