時計仕掛けの宝石箱
この学校の昇降口には、半円型に出っ張った屋根がついている。
そしてその屋根の手近には、窓の施錠などされた事のない、無防備な教材室がある。
海斗のように授業をサボる常習犯がそこを良く利用しているのだと、自慢げに語っていたのは、無駄に印象深かった。
よくもこんな状況下でそんな事を思い出せたな、と響也は我ながら感心してしまった。
「‥それと、海斗には感謝しないとな」
ぽつんと付け加えて、静かに窓を閉めた。もちろん、施錠はしっかりとする。
間一髪で難を逃れた響也達が逃げ込んだ教材室は、閑散としていた。
教師さえあまり使用していないからか、漂う空気に自然に混ざっている埃の臭いが、鼻をくすぐる。
先程の恐怖の追いかけっこが嘘のような静けさに、響也は一時の安らぎを得た。
張り詰めていた緊張が少しほぐれ、上がりっ放しだった肩はようやく定位置に戻る。