時計仕掛けの宝石箱
記憶が混濁しているのか。焦点が合わない瞳は、水鏡のようにゆらゆらと揺らめく。

残酷極まりない光景を目の当たりにした記憶は、まだ呼び起こされていない様子だ。

錯乱していたらと不安を覚えていた響也は、早朝に目覚めたような様に涙が出そうだった。



―しかし。



周囲に視線を走らせた瞬間、蜜羽の体はビクリと強張った。化け物の死骸と散乱した生徒の破片が目に入ったのだろう。

震え始めた蜜羽の肩を抱き、「蜜羽」と呼び掛ける。

それが破滅を呼ぶ言葉になろうとも、蜜羽に説明してやらねばならない。

この戦場の最前線で、無知で無防備にさせてはならないのだ。情報と覚悟という武器を構え、盾を備えさせるのだ。

さもなくば‥程なくして地に墜ちるのだから。
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