時計仕掛けの宝石箱
そこで響也は気付いた。

混沌と渦巻く蜜羽の瞳に映る自身の姿が、異様なまでに落ち着き払っている事に。

そしてそれが何故か違和感なくしっくりきている事が、殊更気味悪い。化け物の亡骸よりもずっと醜悪に見えてならなかった。

ぶるりと頭を振り、響也は蜜羽の手に己の手を重ねて降ろした。

血が通った白桃色の手。美しく繊細な硝子細工に等しい存在。

それを確かめるために握り、響也は極めて自然に思った。



‥俺が、蜜羽を帰してやる。俺達の<日常>に。

どんな事が起きようとも‥必ず。



ごくりと口内の空気を飲み下して、響也は再び開口した。

「冗談なんかじゃない。これが‥これがリアルなんだよ、蜜羽!!

どれだけ信じ難くても、どれだけ俺達の日常と違っても、どれだけ非現実的でも!!!!

‥これが、このセカイの現実で真実なんだよ」

< 178 / 195 >

この作品をシェア

pagetop