時計仕掛けの宝石箱
響也の背の震えが徐々に治まっていくのを、エディリーンは思わず凝視した。

‥この短時間で、こんな状況下で、これを現実だと言い放てた者など、エディリーンの記憶の中に存在しない。否、それ以前の問題だ。認める事そのものが出来た人間を見た事がない。



‥エディリーンは生々しい記憶を呼び覚ました。

断片的に浮かび上がる記憶達は、我先にとエディリーンの脳裏に現れては消える。

ともすれば溜め息が出るようなソレは、もう見慣れた人でなければ鬱懐(ウッカイ)となるであろう。

エディリーンが見てき人数は数万人前後。発狂した者が八割、心が砕けて精神が死んでしまった者が一割強、そして‥彼のように受け入れる事が出来た者は、たったの一人だった。

それも何世紀も前の話である。

エディリーンは無意識に拳を握っていた。

(‥この子‥。

もしかしたら、何か大きな可能性を秘めているのかしら‥)
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