オレンジの教室
少しの間、何しにここへ来たのかも、なぜ早川が自分の席に座っているのかも、忘れていた。
ただ、教室という一つの空間で、すぐそばに彼女がいるということが、なんだか不思議でこそばゆい。
長いまつげが柔らかな肌に影を作り、桜色の唇がほんのり、だが、確かに存在を主張していた。
今まで女の子を前にして、こんなに気持ちが高ぶったことがあっただろうか。
これが恋愛感情というものなのか?
塩田とそういう話したことがあった。
塩田いわく、恋愛感情とは、相手の子がすっごく可愛くて、愛しく思えるもので、その人の言葉や行動一つで落ち込んだり、嬉しくなったりするものらしい。
こんな少女マンガに出てくるような台詞を平気で言ってのけた塩田に、なぜだか少し恥ずかしく思ったこともあった。
その時は、さっぱりわからなかったが、今なら少し分かった気がする。
たぶん、俺が早川に抱いているこの感情は……