大人の女と男の関係

「えー、何にもなかったんですかあ?」


居酒屋のうるさいくらいのざわめきに、千佳ちゃんの嘆き声が加わった。


隣で盛り上がっているのは大学生のグループだろうか。


わいわいとやたら騒がしい。


やっぱりチェーンの居酒屋は避けるべきだったかも。


軽く後悔しながら運ばれてきたカルピスサワーに口をつけた。


千佳ちゃんには、成哉を家に上げたこともキスされたことも言わず、送ってもらったけどすぐに帰ったと話した。


「せっかくお膳立てしてあげたのに~」


「お膳立てって。
成哉は既婚者よ。
奥さんがいる相手とどうしろっていうのよ」


私はわざと怒った顔を作って言った。


「えー、だってそこからロマンスが生まれるかもしれないじゃないですか」


「そういうのはロマンスなんて言わないの。
ただの不倫じゃない!」
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