大人の女と男の関係
「でも、摩耶さんだって言ってましたよ。
香菜さんと成哉さんはお似合いだと思うって」


私は割り箸でサワーをかき混ぜる千佳ちゃんを睨んだ。


「だから、それは昔の話でしょ?
もう成哉は結婚してるんだから、今さらどうにもならないの!」


それはなかば自分に言い聞かせる言葉でもあったけれど、私はそんなそぶりは微塵も見せずに言い放った。


「まったく、千佳ちゃんにはすっかりだまされてたわ。
裏表のない素直な子だと思ってたけど、天然のふりして結構計算尽くで動くタイプでしょ」


だが私がそう言っても、千佳ちゃんはへこたれた様子も見せず、あっけらかんと笑った。


「あれ?香菜さん、気付いてなかったんですか?
香菜さんにはとっくにばれてると思ってたんだけどなあ」


はあ?開き直り?


あーあ、まったく。


けらけらと笑う千佳ちゃんを呆れて眺めた。


その底抜けの明るさには、私もやれやれとため息をつくしかなかった。

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