大人の女と男の関係
だめだ。

成哉が独身に戻ったと思うと、なんだか急に男として意識しすぎて、普通にふるまえない。

そんなのたいしたことじゃない。

書類一枚のことじゃない。

成哉自身は何も変わってないんだから。

今までどおりに。

普通に、普通に。


そう言い聞かせても、成哉の視線を感じるだけで手もまともに動かなくなる。


私はシートベルト一つ締めるのに、ガチャガチャと雑音を立てていた。



私がベルトを止められずに手間取っていると、成哉が手を伸ばしてきた。


カチャン。


一発で止めてくれた。


まあ、自分の車なんだから、そんなのどうってことないことなんだろうけど。


「ありがと」


成哉の目をまともに見られなくて、顎のあたりを見ながら礼を言った。
< 259 / 304 >

この作品をシェア

pagetop