大人の女と男の関係
「さて、どうしようか？」


成哉はエンジンを入れながら、半ば独り言のように聞いてきた。


いや、それはこっちが聞きたいから！


心の中で突っ込むけれど、平静を装って、ゆっくり成哉の方を見た。


目が合うと成哉が聞いてきた。


「香菜さん、おなかすいてる？」


「え？うん、まあ、ね」


さっきまで千佳ちゃんと食事するつもりだったし。


１日働いて、そこそこおなかはすいていた。


「だよなあ、もう６時半だし。
ただ、今日車だからさ。
この辺じゃ、車のまま行ける店って、あんまりないよな？」


「ああ、オフィス街だからね」


私は大通りの周りにそびえたつオフィスビル群を見上げた。


オフィスビルの低層階や地下鉄の駅ビルに飲食店は入っているけど、駐車場付きのところはめったにない。


「どうすっかなあ……
奮発してホテルのレストランでも入るかなあ」


ホテル……？


いや、成哉が言ってるのは近くの有名一流ホテルの中に入ってるレストランなら、ホテルの駐車場に車が止められるってこと！


意識しすぎな自分の発想に恥じ入っていると、成哉が「あ、そうだ」と声をあげた。
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