危険な彼女
泣きながら謝る桜。



いつもは暴力なんて日常茶飯事。



奈津にとって、息をすることくらい当たり前のことである。




だが、桜は心のどこかでそれを気にしていたらしい。




奈津としては大したことではないし、桜だって、普段はことあるごとに自分に暴力をふるっていた。




それなのに、酒が入ると、こんなにも人は変わるものなのか、と奈津は唖然としていた。




「気にしてねぇから…だから、もう謝んなよ………」



「ごめんなさい…ごめんなさい…」




奈津の言葉は耳に入っていないらしい。



奈津に覆い被さったまま、泣きながら謝り続けている。




「……………」




泣いて謝る桜の姿に、奈津はもどかしい感情を覚えた。




今までの行動の全てに罪悪感があったとしたら?



本心では、暴力なんてふるいたくなかったとしたら?





………何だか、無性に桜がかわいく思えてきた。
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