短編集『固茹玉子』
予兆は明らかに有った。

鍵穴にマスターキーを差し込んで解錠した時にはそれ程でもなかったが。いざドアノブを捻らんとして、それに手を掛けた刹那。

ヒンヤリと手のひらを凍らせるその温度に、身体の芯を何か冷たい物が駆け降りたのだ。


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